お知らせ
(1.11.8)「中部横断自動車道経済効果」を山梨大学と共同記者発表
「中部横断自動車道開通による整備効果分析」成果発表
日時 令和元年11月8日(金)13:00~14:00
場所 山梨大学甲府キャンバスT1号館804会議室
会見者
鈴木猛康(山梨大学地域防災マネジメント研究センター長)
安谷 覚(国交省甲府河川国道事務所長)
武藤慎一(山梨大学地域防災マネジメント研究センター都市環境部門長)
(山梨大学大学院准教授 工学部土木環境工学科)
入倉 要(山梨経済同友会代表幹事)
金澤 悟(山梨経済同友会常任幹事)
清水 祥(山梨大学工学部土木環境工学科4年)
(司会)依田光人(山梨経済同友会幹事)
次第
1 開会あいさつ
(1)鈴木猛康(山梨大学地域防災マネジメント研究センター長)
当センターは、教育・研究を通して山梨に貢献する研究組織として2011年、大学の防災・マネジメントの研究拠点として立ち上げました。その中の柱として地域の皆様と連携事業を初年度から続けています。県や市町村および国交省との連携事業を実施し、年間5~6件の成果を地域に還元することに力を注いでいますが、本日の事業発表もその中の一つです。私は防災が専門ですので、自動車専用道路建設における被災・復旧面での費用対効果の話も聞きますが、これ以外に自動車専用道路ができることによって地域の活性化が進む、その効果を経済的に評価してもらいたいとも考えていました。
武藤先生はその研究をなされています。中部横断道が山梨県にとってどれだけの経済効果を発揮するかということを、数字で示すことが重要ですので、本日その報告をいただくことになっています。数字に裏付けされた一つの効果ですけれど、さらにこれが発展しますと山梨への効果をさらに生み出すものと考えていますので、今日の発表成果の数字も最低これだけというふうに申し上げておきます。
(2)安谷 覚(国交省甲府河川国道事務所長)
当事務所は山梨県内で河川や道路の整備管理を実施しております。地域の皆様の連携や協力を頂きまして感謝申し上げます。我々が河川や道路の整備管理するにあたり、知見に基づいて河川・道路をどう利用し生かせるか山梨大学と連携させていただき、同友会さんにも経済効果を発揮するためにお知恵を頂きながら、事業を進めているところです。本日は中部横断道開通による整備効果の発表ですが、整備中の山梨⇔静岡の事業区間は、今月17日に富沢IC~南部IC間が開通し、さらに来年の内に全通します。企業立地などこれを見越して様々な経済活動が行われているところです。
山梨大学、山梨経済同友会より地域効果分析を発表頂きますが、我々も作ったり管理したり或いは効果奏功のための様々な資料やデータをお示ししていますが、利用促進には、正にこういった様々な観点からのご指摘や社会経済活動に波及させるところで関係皆様のご協力がなければ、インフラもせっかく作ったけれども使えないということになりますので、今日の発表を契機に、このインフラ整備が社会のお役に立てるように願っております。
2.「中部横断自動車道開通による整備効果分析」事業について
入倉 要(山梨経済同友会 代表幹事)
この事業は、私どもから武藤先生に経済効果の数字を出していただき是非利用研究させていただきたいとお願いさせていただきました。昨年の4月16日にも同様に、リニア経済効果の研究(開通後のGRP変化予測と、新駅から甲府駅までの二次交通整備による経済効果)を山梨大学(佐々木教授と武藤准教授)にお願いして、その成果を共同で記者発表させていただきました。
同友会ではリニアと中部横断道に関する研究や議論、提言も進めてきましたが、中部横断道が全通した場合山梨県にどのような経済効果が実際にあるのか、これから発表される数字および中身が非常に大事でして、このインフラを武器にして如何に経済効果を増していくか、行政や関係機関と一緒に手を打ち、この数字を目減りするのではなく上回る効果を恒久的に繋げていきたく、今後議論しながら、各方面に協力をお願いしていきたいと思っています。
経済効果の発表
武藤慎一(山梨大学地域防災マネジメント研究センター都市環境部門長)
中部横断道が2020年中に静岡山梨間が全通(双葉まで)しますので、それを前提とした計測結果の数字の発表を行います。
先ず、現状の説明です。
今月11/17の午後3時に富沢⇔南部間(6.7㌔)が開通しますが、残りの区間(南部⇔六郷間)が2020年内に開通(何れも無料区間)しますと、中部横断道が清水から双葉まで全通することになります。すでに2019年3月に新清水⇔富沢間(有料区間)が開通しましたが、開通後の4月の断面交通量(52号線と横断道の合計)は、この間の実測合計で3割増加しています。また、沿線地域に新たな数か所の企業立地や、新たな広域観光コースを生むといった、開通に伴う発現効果が出て来ています。
次に、今回の経済波及効果(最終的な効果)の計測方法及び結果を説明します。
中部横断道の整備(双葉まで全通)によって、家計の実質所得増加(便益の発生)がどれだけ図られるか、これは「付加価値増加」と、「利用可能時間所得増加」に分けて考えられます。前者の付加価値の増加とは、企業の生産増加に伴う付加価値の計測、後者は実際にお金が増えるわけではないが、実質的に所得が増えるという意味の計測になります。
中部横断道開通による所要時間の短縮((例)山梨県庁⇔静岡県庁間は1時間の短縮)により、輸送費用の低下(物流・業務交通の活性化)と、移動時間費用節約(観光の活性化と家計の時間短縮効果)が図れます。物流・業務交通の活性化に伴って生産量の増加(一次~三次産業)が見込まれ、観光の活性化に伴って移動先の家計とサービス需要の増加が観光消費を増やし、それはまた産業生産やサービス生産増加に波及するメカニズムです。これらを取りまとめて今回の実質所得の増加(便益)としています。
4、5ページは、基になる現状の山梨・静岡・長野における生産および観光データと、産業別生産データの詳細および比較を示しています。
計測には経済波及効果計測モデル(空間的応用一般均衡(SGGE)モデル)を使用し、中部横断道整備の未開通時との比較を行って結果を出しています。データは、産業関連表データ、地域間貨物、旅客流動データを用います。
(1)貨物・旅客交通量の変化について
■山梨→静岡の交通量は、貨物30.8%増・旅客34.0%増
■静岡→山梨の交通量は、貨物32.4%増・旅客40.4%増
(2)交通量の増加による生産量の変化について
交通量の増加によって、(さきほどの経済効果の流れを解説しましたが、)生産量がどれだけ変化するか
■産業別生産量変化率(1~3次産業別合計)
山梨県:0.35%~0.4% (+377億円/年)
静岡県:0.08%~0.14%(+550億円/年)
長野県:0.03%~0.07%(+109億円/年)
■生産量変化の内訳(1~3次産業別合計)
山梨県の特徴は、
1次産業は、移出が大きく、
2次産業は、飲食料品、電子・電気機械部門の伸びが増加。
3次産業は、商業・観光産業に加えて、金融・不動産の伸びが増加。
(3)実質所得変化(便益)の見込み
■各県別便益
・山梨県:135億円(時間所得74億、付加価値所得61億)
世帯当たり便益41,400円(年・世帯)
・静岡県:182億円(時間所得60億、付加価値所得122億)
世帯当たり便益13,100円(年・世帯)
・長野県:17億円(時間所得4億、付加価値所得13億)
世帯当たり便益2,200円(年・世帯)
■最終費用便益分析結果
・総便益:8,850億円(単年度412億円/年)
・総費用:6,345億円
・費用便益比:1.395
(4)今後の課題
・山梨は近隣他県に比べ、付加価値所得(企業生産)を増加させる余地が伺えます。
物流や業務交通の活性化を通じて付加価値所得を高めていくことが今後の検討課題ではないかと思います。
・リニアは広域交通なのでストロー効果が懸念されますが、今後中部横断道が開通すれば、(甲信越静や北関東の)縦の軸の経済圏ができます。佐久までの北部区間の整備も含めて地域の連携が重要であると思います。
山梨経済同友会の意見
入倉 要(山梨経済同友会 代表幹事)
この事業を引き受けていただいた山梨大学および国交省甲府河川国道事務所様に、改めて感謝申し上げます。昨年、甲府⇔品川間が25分で繋がるリニアの経済効果を、年間120億円(さらに速達性の高い甲府駅間のアクセス整備によって+21億円)になると発表しました。今回は中部横断道が静岡県と繋がることで135億円の効果ができ、加えて広がる可能性がある。これを我々経済同友会が受け止めて議論し、行政と組みながら展開していければと思っています。中部横断道はリニアに比べ、地域内における経済的な物流効果や移動効果が大きく、拡大の可能性も見込めることから、山梨県の活性化に活かしやすいと思います。今後上手く利用すべきと思っています。
金澤 悟(山梨経済同友会中部横断道部会長)
山梨県は、中部横断道の開通と先にはリニア新幹線の営業開始という、インフラ整備に伴うかつてない大きな機会を得ます。人口減少の課題に対しては、「山梨に来たい、住みたい」と思われる実績作りの積み重ねが大切に思います。中部横断道の開通によって人やモノの流れが加速され、発表頂いた経済効果の数字は、何もしなければ少なく頑張れば上回ります。今後リニアとのシナジー効果も展望しながら、経済効果を一層上げていく可能性や期待に対する努力が必要であると思っています。中部横断道のストック効果が十分に発揮されるよう、産業や観光の面から行政に提言したり、地域と一体になって活動していきたいと思います。
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(文責:事務局)