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(5.7.11)「中部横断道北部区間の経済効果」を山梨大学と共同記者発表

研究成果発表【記者会見】

日 時:令和5年7月11日(火) 13:30~14:30

場 所:山梨大学甲府キャンパス T1号館8階804会議室

内 容:「中部横断自動車道北部区間(長坂-佐久・小諸間)の開通による整備効果」の研究成果発表

    司会:山梨経済同友会 リニア中部横断道部会長  五領田周司

出席者(敬称略)

山梨大学  学長                  中村和彦                                            

      工学域長                                                       中山栄浩                        

      地域防災・マネジメント研究センター長  齊藤成彦            

      地域防災・マネジメント研究センター教授    武藤慎一            

      医工農総合教育部修士1年                     田村 昴                    

山梨経済同友会 代表幹事                                                   入倉 要    

中部横断自動車道経済懇談会長(佐久商工会議所会頭)     中川正人

 

経済効果の発表

武藤慎一(山梨大学地域防災マネジメント研究センター教授)

本日は、長坂⇔佐久小諸間の全線開通による整備効果につきまして報告させていただきます。

 

   説明資料は、こちらをクリックしてください(PDF)

 

先ず、現状のご説明です。(P2)

 中部横断道(E52)の北部区間は、佐久小諸⇔佐久南間が2011年に供用開始され、佐久南⇔八千穂高原間は2018年に供用開始していまして、現在、八千穂高原⇔長坂間約34㌔が基本計画路線となっています。

全通に伴う経済的効果は、物流(広域物流ネットワーク強化)、人流(主に観光の活性化:長野、北陸、北関東の観光客の増加が期待)、農業(主に地域野菜出荷の速達性向上)が主に期待されます。

 

また、中部横断道北部区間は、上信越道(E18)と中央道(E20)を繋ぐ路線であることと、新直轄方式による区間ですので、仮に無料区間としますと時短および料金節約的な効果も見込まれます。(P3)

甲府から長野または上田に行く場合、現行の高速道路の経路➀と、北部区間が開通した場合の経路➁について、時間及び利用料金の比較を、GISシステムにより計測した結果です。

➀現行の最短経路(E20、E19、E18を利用)

・甲府市役所⇔長野市役所  139.9分 3,900円

・甲府市役所⇔上田市役所  143.5分 4,220円

➁開通ありの最短経路(E20、E52、E18を利用)

甲府市役所⇔長野市役所  134.0分 2,480円 (-5.9分、-1,420円

甲府市役所⇔上田市役所  103.8分 1,720円 (-39.7分、-2,500円

このように、E52が、E18とE20を繋ぐ事により、時短に加えて利用料金の直接的な変化(便益)が生まれ経路選択変更によってE52の利用率もさらに高まり、新たにE52沿線地域への消費効果および経済効果を生むものと予測されます。

 

次に、今回の経済波及効果の計測方法及び結果を説明します。(P4)

 家計への効果を考えますと、移動時間の短縮は、交通需要の増加、目的地の変更、交通手段の転換を通じて家計消費の増加につながり、企業の生産を増加させます。また、移動時間短縮は、余暇・労働時間の増加につながります。

企業への効果を考えますと、旅客・貨物運輸企業の生産性向上は、輸送費用を低下させ、その結果、財やサービスの価格が低下します。それは、地域の消費や原材料等の中間需要を増加させますので、企業の生産が増加するとともに、企業立地の増加につながります。企業生産の増加は、雇用の増加につながり、企業の付加価値額、すなわち地域GDPが増加します。地域GDPは、家計所得として還元されるので、地域GDPの増加は家計所得も増加させることになります。

経済効果は、これらを取りまとめて時間短縮効果と付加価値増加効果による実質所得の増加(便益)として計測されます。

 

計測には、経済波及効果計測モデル(空間的応用一般均衡(SCGE)モデル)を使用し、

中部横断道整備の未開通時との比較を行って結果を出しています。データは、2015年の産業連関表データ、地域間貨物・旅客流動データ等を用います。

(1)貨物・旅客交通量の増加について(年間)(P5)

   区間         貨物         旅客

・山梨→佐久・上田   6.4万台(+49.0%)  45.9万台(+61.0%)

・静岡→佐久・上田   8.7万台(+21.6%)  26.9万台(+35.7%)

・佐久・上田→山梨   0.7万台(+31.2%)  57.1万台(+72.7%)

・佐久・上田→静岡   5.5万台(+18.6%)  30.0万台(+35.4%)

 

(2)交通量の増加による生産量の変化について(年間)(P6)

交通量の増加によって、(さきほどの経済効果の流れを解説しましたが、)生産量がどれだけ変化するか

■地域・産業別生産量の変化(1~3次産業別合計(年間))

・山梨県 : 72.9億円  

・静岡県 : 51.9億円

・長野県 : 228.5億円

■生産量変化の内訳(1~3次産業別合計)

県内供給の増加に加え、移出による生産量の増加(生産量=県内供給+移出+輸出)

・農林水産業 ~ 野菜や果物の出荷増加

・製造業   ~ 製造業の進出による生産増加

・サービス業 ~ 商業や金融、観光の増加

 

(3)実質所得変化(便益)の見込み(年間)(P7)

■各県別便益(付加価値所得+時間短縮所得/年)

山梨県:73.5億円     (※南部区間:135億円)

静岡県:21.0億円     (※南部区間:182億円)

長野県:106.9億円       (※南部区間:17億円)

 (佐久・上田:48.3億円

・東日本:58.0億円

・西日本:38.6億円

合計:297億円       (※南部区間:412億円)

■最終費用便益分析結果

・総便益:6,678億円

・総費用:4,168億円

費用便益比:1.60       (※南部区間:1.395)

 (総費用は八千穂~佐久南間の費用から算出、便益比検討年数50年)

 (費用便益比は1.0を上回る)

 

(4)経済効果以外に考えられる効果 (P8)

中部横断道北部区間は、主に国道141号の代替ルートとしての役割も加わりますので、これが開通した場合には、生活道路(沿線地域)としての活用はもとより、周辺地域的にも様々な効果が期待されます。

■医療  ~ 緊急搬送の時間短縮、救命率の向上、重篤患者に対する救急医療の支援など

■防災  ~ 想定される被害の軽減、災害時の代替ルート

■土地利用~ 企業立地による不動産価値の上昇、住宅地開発による人口の増加など

 

山梨経済同友会の意見

入倉 要(山梨経済同友会 代表幹事)

 この事業を引き受けていただいた山梨大学様およびご協力いただいた国交省甲府河川国道事務所様、中部横断道経済懇談会様に、改めて感謝申し上げます。

 山梨県は、リニア中央新幹線と中部横断道の整備というかつてない大きな機会を得ます。山梨経済同友会は、これまで、リニアの経済効果南部区間の経済効果を山梨大学に依頼してともに発表してきましたが、今回、北部区間の経済効果便益の発表となります。大学の若い学生さんに研究して頂けば山梨にとってもプラスにもなることから、長年お付き合いのある武藤教授にご協力をお願いして来ています。

 インフラ整備という大きなプロジェクトを地域経済の活性化につなげるためには、県民が意識をして、知恵を絞って事前に準備して盛り上げていくことが大切です。また経済効果の具体的な発表によって、経済人は反応してビジネスチャンスとなり、地域の経済活性化にも繋がります。

 南部区間では開通直後より、企業立地の増加や観光の活性化に大きな進展が見られていますし、一部(新直轄の)区間は代替ルートとして(安心・安全・便利)の大きな役割も担っています。

 北部区間は早期事業化に向けた沿線地域の期待も高まっています。新たに(新直轄の)北部区間が開通すれば、南部区間と合わせて(甲信越静や北関東との)縦の軸の経済圏・交流圏ができますので、山梨の経済発展・豊かさの実現にさらに大きく寄与するものと思います。今後の北部区間の整備の進展には、山梨・長野地域を超えてお互いにプラスとなるような連携や交流が重要です。この発表が多くの県民や沿線の方々に伝わって、北部区間の地域の有するポテンシャルに加えてE52の様々な効果・将来性が改めて見直され、次の一歩につながっていくことを望みます。

 

 

山梨経済同友会

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(文責:事務局)