お知らせ
(7.2.19)「中部横断自動車道(南部区間全線開通3年後)の整備効果」を山梨大学と共同記者発表
「中部横断自動車道(南部区間の全線開通3年後)の整備効果」成果発表
日時 令和7年2月19日(水)14:00~15:00
場所 山梨大学 大村智記念学術館 2階大村記念ホール
会見者
黒澤 尋(山梨大学理事)(中村和彦学長 代理)
中山栄浩(山梨大学大学院総合研究部工学域長)
武藤慎一(山梨大学地域防災マネジメント研究センター長/教授)
草野真史(国交省甲府河川国道事務所長)
長澤重俊(山梨経済同友会代表幹事)
入倉 要(山梨経済同友会代表幹事)
劉 星委(山梨大学地域防災マネジメント研究センター特任教授)
田村 昴(山梨大学大学院(修士課程)工学専攻2年)
(司会)宮田雅夫(山梨経済同友会常任幹事)
次第
Ⅰ. 開会あいさつ
黒澤 尋(山梨大学理事)
中部横断自動車道南部区間の全線開通3年後の整備効果に関する記者発表にあたり、ご挨拶申し上げます。
中部横断自動車道は、静岡県新清水JCTから山梨県を通り長野県の佐久小諸JCTまでを結ぶ高速道路で、その南部区間の全線開通から3年半が経過いたしました。南部区間沿線の峡南地域や甲府盆地西側の南アルプス市さらに韮崎市、北杜市では工業団地或いは物流拠点などの整備が進み、また観光客も増加しています。県民の皆様も数々の経済効果が発現していることも実感されています。
本日は地域防災マネジメント研究センターのセンター長である武藤教授より南部区間が開通して3年後の交通量や企業進出のデータを用いて沿線地域を中心にどれだけの経済効果が発現しているかを報告申し上げます。そして、それらの経済活性化のデータを踏まえ、どれだけの整備効果が生じたかについてもご報告いたします。
中部横断自動車道は、今後、山梨県と長野県を結ぶ北部区間が整備される予定となっています。北部区間の開通により山梨県と長野県佐久地域とのアクセスが向上し、併せた経済効果が発現すると期待されています。その北部区間の整備を促進するためにも、南部区間の整備効果が着実に発現していることを本日お示ししたいということで、このような記者会見の場を設けさせていただきました。本日の記者発表が地域の発展に繋がり、さらに、北部区間の整備の促進に供しますことを祈念いたしましてご挨拶といたします。
長澤重俊(山梨経済同友会代表幹事)
山梨経済 同友会では2011年9月にリニア部会、2016年7月に中部横断道部会を立ち上げて、リニア中部横断道部会として研究発表・提言の活動をして参りました。以来、武藤教授と共に経済効果を数字で計測し、2019年11月に南部区間全通の経済効果予測の記者発表を行って、インフラ整備がもたらす地域内外の効果を示し、有効活用に向けた県民意識を盛り上げる活動を行って参りました。
2021年8月関係者各位のご努力による県民待望の全線開通式をお祝いし、その後3年を経過し、現在では例えば地元の「道の駅富士川」での買い物客数は19年比2割増の50万人強になっています。価値ある道が繋がることによって人・モノの流れが大きく変わりその生み出す経済効果を大いに実感し又今後にも期待するものであります。
これに引き続き、念願である北部区間が開通して、東信州地区・軽井沢の地区と山梨・静岡が繋がり、県内における地域経済全体が発展していくよう、経済団体として活動して参ります。
草野真史(国交省甲府河川国道事務所長)
山梨大学および山梨経済同友会により会見の場を設けて戴き感謝します。
国交省の仕事は、道路を作ることはもちろん、供用が開始された道路を上手く使って頂くことも大事な仕事かと思っています。ここに多くのマスコミの皆さんにお集まりいただいていますが、本日取りまとめた整備効果を広く発信していただくことにより、見た方がより一層中部横断道を使って観光しようとか、企業の方が沿線に進出しようとか、そういった行動につながっていくという風に思いますので、本日の会見を契機にさらに地域の発展につながっていくよう祈念します。
Ⅱ.「中部横断自動車道南部区間(山梨-静岡間)の全線開通3年後の整備効果』の研究成果発表
武藤慎一(山梨大学地域防災マネジメント研究センター長/教授)
中部横断道南部区間の全線開通3年後の整備効果の発表を行います。
中部横断自動車道(E52:新清水JCT~佐久小諸JCT間)は、132㌔になりますが、南部区間(新清水JCT~双葉JCT:87㌔)は、残された下部温泉早川IC~南部ICが2021年8月開通して全線開通となり、これより3年経過後のデータによる計測結果を以下に示します。
1. 移動所要時間の短縮(山梨県庁~静岡県庁間が70分短縮(2時間45分→1時間35分))
(一般道路40㎞、新東名120㎞、中部横断道70㎞の速度計算)
2. 経済効果の発表
計測には、経済波及効果計測モデル(空間的応用一般均衡(SCGE)モデル)を使用します。
■経済効果:(367億円/年)
・移動・輸送時間短縮による便益 108億円
・付加価値の増加額 259億円
(付加価値増加額の内訳:第一次産業2億円、第二次産業8億円、第三次産業176億円)
■地域別内訳の経済効果:(367億円/年)
・山梨県 123億円
・静岡県 136億円
・長野県 30億円
・その他 78億円
3. 整備効果の発表
【産業】
〇 IC 5㎞圏内における設備投資額累計:500億円以上(H19~R5)
(0.6億円→515億円:工場立地動向調査(経産省)
〇 IC 5㎞圏内における工業地の地価:最大で約1割向上(H28~R6)
(山梨県地価調査結果)
〇 中部横断道および周辺高速道路のIC付近に企業立地:~地域の雇用創出・産業振興貢献
(直近6か年で9件の立地、今後5か年で5件の計画)
(新聞各紙、各社HPおよび発表資料)
【観光】
〇 沿線観光地等を訪れる県外からの来訪者が増加(1%~3%以上)
(60分以上滞在した1㎞メッシュを滞在地として集計:Agoop)
〇 沿線観光地における平均滞在時間が約11分増加(225分~236分)
平均滞在個所数が約1割増加(1.08~1.14:Agoop)
〇 道の駅「富士川」集客数が50万人/年を超過(R1~R6:2割増加)
【物流】
〇 山梨県の農産物の輸出量が 1.9億円→19.8億円(H20~R5:山梨県農政部)
〇 清水港、静岡中央卸市場では一貫したコールドチェーン体制を構築
〇 時短効果:農産物の鮮度Up、トラブルの減少、輸送量・耕作面積の増加
【安全・防災・代替】
〇 身延町・南部町から重篤患者救急搬送利用割合の変化等
R2年より2割増加、搬送時間が平均13分短縮:(峡南消防本部、病院救命センター)
車両の振動・揺れの軽減、搬送予測時間の把握がスムースになり救命率の向上見込
〇 国道52号の“事前通行規制区間(雨量増加通行止め区間)”に対する代替機能を発揮
<古屋敷(2.4㎞:150㎜)、万沢(4.8㎞:300㎜)、逢坂(1.7㎞:400㎜)>
H26~R5 通行止め:古屋敷(5回)、万沢(7回)、逢坂(4回)を迂回可能になり
地域の孤立を回避(孤立集落9,800人 R2国勢調査)
〇 東京圏から中京圏への走行経路の増加~9通り→15通り
(対象区間:圏央道→三遠南信道まで:E20、E1、E1A利用にE52をプラス)
4. 交通状況の発表
〇 開通直前と比較、E52の交通量が約2倍増(土休日:7,200台→15,400台/日)
国道52号の交通量は約3割減(土休日:11,500台→8,500台/日)
(R3~R6:国交省トラフィックカウンター)
〇 開通後、県をまたいで移動した車両が約1.9倍増( 2,477台→ 4,628台/日)
(R1.5~R6.5:NEXCO中日本ETCログデータ)
〇 峡北・峡中地域から名古屋市まで平均36分短縮(距離220㎞全車比較)
(双葉JCTより中央道経由170分、中部横断道経由177分→141分)
〇 中央道経由→中部横断道経由の貨物車利用割合が約4割増加(29%→68%)
(H30~R5:トラプロRデータ)
中央道経由に比べ、中部横断道+新東名高速の利用(距離はほぼ同じ)の方が効率化に寄与
(線形が良い(荷崩れの心配がない)、高度差がない、冬季の心配がない、E1・E1Aは複数車線、E52の一部は無料)
〇 中央道と東名高速道路との接続機能(メリット)も十分に果たしている
田村 昴(山梨大学大学院修士課程工学専攻2年)
武藤教授とともに経済効果計測の研究をさせていただきました。貨物・乗用車・緊急車両などの移動手段を用いるのにあたり、産業、物流、観光、防災への役割といった多くの機能を持つ中部横断道の様々な利用促進がなされることによって、さらに私たちに多くの成果が期待されると思います。この研究に携われたことを光栄に思います。
Ⅲ. 山梨経済同友会の意見
長澤重俊(山梨経済同友会 代表幹事)
峡南地区は静岡県に近く関係性の大きい地区とはいえ、県内でも人口減少や不便さが目立つ地区ではありますが、この高速道路ができたことにより、次第に沿線各地に企業立地の投資が生まれ、大きな経済効果が発現して来ています。さらには4月にコストコがオープンしますし、ほかにもコーセーはじめ様々な工場が立地予定されるなど、地域の活性化や経済発展が見込まれています。
人口減少の続く山梨にあって、観光面でのメリットばかりでなく、新たな産業(新しい設備投資)が生まれて雇用も生まれ、物流面からも移出入や港を利用した輸出入を伴う流れが変化する点、また、高齢化社会の中で生活道路としても安全安心、防災が確保される点など大きな利点とされます。これらの事から、南部区間に関して総合的な道路価値評価は非常に高いと言えます。
一方、残された北部区間の開通は進んでおりません。道路建設に否定的な面ばかり強調されておりますが、こうした(デュアル型の)高速道路整備の持つ多面的・将来的な地域発展の意味合いをお互いに良く認識し、皆さんの協力を得て、念願であります北部区間の開通に向けて、我々経済同友会としても活動を続けていきたいと思っています。
入倉 要(山梨経済同友会 代表幹事)
山梨経済同友会では、以前、2019年11月に山梨大学との共同記者会見で「南部区間の経済効果を県内120億~135億円とし、さらには経済効果を高めていく可能性があります、インフラ整備という大きなプロジェクトを地域経済の活性化につなげるためには、県民が意識をして、知恵を絞って準備して盛り上げていくことが大切です。」との予測発表を行いました。本日の結果(123億円)からはさらなる上ぶれが出来たのではないかと、経済団体として考えているところです。沿線地域の皆様をはじめ、このチャンスをどう生かしていくのか、改めて多くの県民の方に考えていただくことが、これからの山梨の将来にとって大事と思っています。今回の研究発表も、地元山梨大学の若い学生さんが授業の一環として武藤教授のご指導を頂きながら経験を積んで発表に至る事業として大変意義のあるものと思っていますし、お礼を申し上げます。
北部区間に関しては一昨年7月に、経済効果予測を発表させていただきましたが、北部区間が開通すれば、南部区間と合わせて(甲信越静や北関東との)縦の軸の経済圏・交流圏ができますので、山梨および近接県も含めた経済発展・豊かさの実現にさらに大きく寄与するものと思います。
南部区間の結果発表(道路価値評価は非常に高い)を受けて、北部区間もより早く実現に至るよう我々の今後の活動に繋げていきたいと思います。
(文責:事務局)
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(2.10.26)中部横断自動車道の開通に向けて盛り上げよう
(2.9.2)中日本高速道路㈱甲府保全サービスセンターを訪問しました(中部横断道部会)
(1.11.8)「中部横断自動車道経済効果」を山梨大学と共同記者発表
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