お知らせ
(8/20)『山梨観光の現状と展望』~ withコロナ&afterコロナ ~講演会実施報告
標記につきご報告いたします
山梨リニューアル委員会
交流人口推進部会
部会長 原田由起彦
日 時 令和2年8月20日(木) 午前10:00~11:30
場 所 甲府記念日ホテル 2F「桃源」 (TEL 253-8111)
演 題 『山梨観光の現状と展望』~ withコロナ&afterコロナ ~
講 師 仲田 道弘 氏
(やまなし観光推進機構 理事長/前・山梨県観光部長)
【プロフィール】1959年山梨県生まれ。甲府一高、筑波大学社会学類卒業後、山梨県庁入庁。89年三井物産(株)派遣研修。翌90年から25年以上にわたり、ワイン産業の振興に携わる。観光推進機構専務理事、観光部理事、観光部長を経て、本年2020(令和2)年3月県庁を退任、6月よりやまなし観光推進機構理事長に就任され現在に至っています。
【著書】
『日本ワイン誕生考―知られざる明治期ワイン造りの全貌』(2018/5発売/山日新聞社)
『日本ワインの夜明け~葡萄酒造りを拓く~』(2020/8発売/創森社)
講演会の様子
■内容(要旨)
私は38年間の県庁生活をこの3月で退職しまして、6月から山梨観光推進機構にお邪魔しております。その2月から3月にかけてコロナが蔓延して観光の話題すら憚れたということがあります。今日は、これまでの私どもの取組や今後どのようになっていくのか、皆さんと一緒にお知恵を拝借しながら方向性を決めていければと思います。
Withコロナにおける観光について(要旨)
〇「感染者数」3/18より現在までの推移から
第2波といえる感染者数増加の現状であるが、今後緊急事態宣言をしないまでも経済活動とのバランスを取りながらピークを過ぎていくのではないか。
〇「実質GDP成長率」と足元の「客数」の推移
20年4~6月期(-27.8%)、8割近くは客数が半数以下に減った
〇中長期の経済・財政に関する「実質GDP」の試算(経済財政諮問会議:7/31)
リーマンショック時(2008年)-3.4%であったが、今回(2020年7月)-4.5%、
(2021年)の試算は+3.4%
〇18か月先までの「旅行需要予測」(星野リゾート)
感染者数は医療崩壊上限の領域内で自粛と緩和を繰り返し、旅行需要はそれに影響を受けながら増減する。1年~1.5年の間には治療薬とワクチンが普及し、旅行需要は大幅に伸びると予想。
〇日本国内の旅行市場(消費額)規模(2019年)は、約28兆円。
国内市場:22兆円、インバウンド:4.8兆円、海外旅行:1.2兆円。
・国内需要を喚起していくことが先。
・インバウンド復帰は、国同士の渡航制限を徐々に解除しながら2~3年はかかるだろう。
〇山梨県の旅行消費額(2019年)は4,330億円。
宿泊(41.5%)、日帰り(52.1%)、インバウンド(6.4%)
山梨はインバウンド割合がさほどなく、爆買いなど比較的に影響も少ない。 東京の異動が解除されると、戻りの部分が大きい。
〇コロナ以前に戻る需要予想は
1年後(18.4%)、1.5年後(18.4%)、2年後(14.6%)、2.5年後(1.0%)、3年後(6.8%)
人の行動が抑えられているが、3密、直接コミュニケ―ションや旅行は東京オリンピックまでには何れ特効薬をきっかけに戻るので、出来るだけ利益を上げるような取り組みをしていくべきである。
〇新型コロナ影響収束後にやりたいこと調査
国内旅行、外食、テーマパーク、映画、コンサート、海外旅行…
1 山梨県の観光の現状
<参考資料>
「山梨観光」早分かり20の指標~山梨の観光・観光産業の現状~(令和2年6月30日版)(PDF)
〇山梨県の旅行消費額(2019年:4,330億円)とその内訳
宿泊費(32.1%)、飲食費(21.5%)、土産代(19.0%)、交通費(16.4%)、入場料(4.4%)、その他。
宿泊費より、飲食+土産代の方が多いという観光スタイル
〇県内産業におけるGDP(H27年)内訳比較
機械工業(6,147億円:19.2%)、 卸・小売業(2,627億円:8.2%)、
観光業(2,611億円:8.2%)、 食料品製造業(1,529億円)、
農林水産業(551億円:1.7%)
〇観光客数・観光消費額の推移
観光客数増加するも観光消費額の伸び悩み
〇延べ宿泊者数の推移
R1年県全体で9,072千人(外国人比率は22.7%に増加)
〇期別の観光消費額比較
山梨は7-9月(1,263億円)に対し、1-3月(658億円)とその差が特徴的なため、通年の生産性UP(冬の観光推進および平均的雇用)が課題といえる。
また、全国値でみると宿泊消費額が日帰り消費額を遥かに上回っているが、山梨は日帰り消費額が上回っている現状。
〇延べ宿泊者数の人口に対する比率で見ると
宿泊者人口比率では沖縄県に続いて全国第2位
〇人口一人当たりの観光消費額で見ると
観光消費額に対する人口比率では全国第1位
〇宿泊・飲食業の生産性(H28)
山梨県は全国第9位(事業従事者1人あたり付加価値額=223万円)(全国平均215万円)。
(ただし、全国全産業の労働生産性は536万円であり、低い)
市町村別にみても、ばらつきがあり、ニセコ(760万円)、熱海(495万円)に比べると、生産性の向上(高収益)が求められる。本県では、この付加価値額をあげていこうとする政策をうっています。
2 山梨県のインバウンドの現状
〇外国人延べ宿泊者数県別ランキング(2019年)
東京(29百万)、大阪(18百万)、京都(12百万)、北海道(9百万)
山梨(2百万)で全国11位
〇外国人宿泊者割合県別ランキング(2019年)
京都(39.1%)、大阪(37.8%)、東京(37.2%)、北海道(23.8%)・・
山梨(22.7%)は7位で、 16.4%(2016年)→22.7%(2019年)と増加傾向
〇山梨県国別の延べ宿泊者割合(2019年)
中国(43%)、台湾(13%)、タイ(9%)、香港(7%)、ベトナム(4%)その他(24%)
中国の割合は減少
〇山梨県インバウンド一人当たり旅行単価(2019年)
全体(9,854円)、一回当たり(12,814円)
例えば富士山観光石和一泊7千円というような形
山梨は、団体旅行商品割合が高い(東京、京都、大阪の次)
3 山梨観光の展望
(1) 新やまなし観光推進”数値目標”
①旅行消費額4,500億円(2022年)←4,001億円(2018年)より12.5%増
コロナ影響下見直しているが、客数でなく消費額をアップ
②観光客満足度…41.1%→50.0%(1.22倍)
③延べ宿泊客数…861万人→970万人(12.7%UP)
④富士の国やまなし観光HPアクセス数…994万PV→1,200万PV(20.7%UP)
⑤平均消費額…10,616円→12,000円(13.0%UP)
⑥外国人宿泊客平均消費額…16,063円→20,000円(24.5%UP)
⑦宿泊・飲食業従事者…223万円→260万円(16.6%UP)
(2) 取り組みの方向性=観光消費額のUP
■滞在時間の拡大(消費拡大)のために
① 交通渋滞の解消
中央道の土日の渋滞~新小仏トンネル、御殿場バイパスに期待
② 共通した観光テーマによる周遊
ワインツーリズム
温泉ツーリズム
ガストロノミーツーリズム(その土地ならではの食や自然・文化をたのしむ旅)
③ ナイトタイムエコノミー
■観光産業のブラッシュアップ
(高付加価値化、生産性向上、収益性向上)
三ツ星(☆☆☆)
ホテル旅館、レストラン、県産品、観光施設、列車
若者が憧れる観光産業へ!
■インバウンド戦略の転換
コト、トキ消費や高付加価値を求める顧客の誘客
■情報発信のデジタル化
県DMOのオウンドメディア化
DMO(Destination Management Organization)
(地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人)
(3) 当面の重点施策
■ワイン県やまなし
料理のブラッシュアップ
料理とワインのマリアージュ
ワインリゾート構想の推進
山梨のこれからの観光にとって重要なのは、宿泊飲食を含めた観光産業自体が観光の重要なコンテンツになることで生産性を高め、利益率を上げること。これがこれからアフター・コロナの観光産業の目指す方向性だと考える。
cf.「長期的には生産性がすべて」だ(アトキンソン)
→ 今後、サービス産業に関わる企業、とりわけ小さな旅館や飲食店のような零細企業は、「存在価値」を見つけて生産性を上げなければならない。「サービスの対価を是非払いたい。払わせえて欲しい」と顧客から言われるように。
(文責:事務局)