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経済人のコラム 時局寸評

TOP 経済人のコラム(時局寸評) 感染症の時代

感染症の時代

 私は、新型コロナウイルス感染症の第2波と言われる波の中で、2020年7月下旬に着任しましたが、同感染症が流行し始めてから約2年が経過しようとしています。

 

多くの尊い命が失われたほか、観光・飲食業などの対面型サービス業を中心に、厳しい状況を余儀なくされました。この間、感染症の最前線で対応された医療機関・保健所などの皆様方に対する敬意と感謝の気持ちは絶えません。

 

着任以降、日本銀行甲府支店長の立場から、政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針や地方自治体の要請を注視しつつ、指定公共機関としての業務継続を確保することを最優先に取り組んできました。
このため、店内の感染症対策を徹底するとともに、対外活動のコントロールや甲府支店を一緒に支えてくれている職員のケアなどに細心の注意を払ってきました。
また、県内の金融経済動向の把握のために、多くの企業経営者、業界関係団体、地方自治体などの方々のご協力を頂き、定期的な記者会見を通じて地元に情報を発信するとともに、本部への適切なレポーティングに努めてきました。
これまでの支店長では経験できないような貴重な経験をさせて頂きました。

 

最近、感染症を含めて今の時代について思考を巡らせることがありますので、個人的な見解を述べさせて頂きます。

感染症は、我々に今後に向けたいくつかの教訓を与えたと思います。

 

デジタル化の推進、働き方の変革、サプライチェーンの重要性、高付加価値化などです。
また、従来から課題であった少子高齢化・人口減少に加え、社会・経済に潜在していた多くの環境変化や新たな課題を浮き彫りにし、各国の政府・企業・国民に対して、その課題解決に向けた対応を加速化させているように感じます。
米中の貿易摩擦やハイテク産業を巡る競争はデジタル化の流れの中で益々激化しています。
気候変動が経済に与えるリスクについて、地球環境が存在・持続するからこそ経済が成り立つということを多くの人が認識し始めたことから、環境への取り組みが急展開しています。

 

こうした動きの中には、各国政府が感染症による経済の閉塞感を打破するため、成長分野を模索する動きも加わっており、日本経済は、政治・経済の枠組みや資金力などが異なる国々との競争に晒されています。
この結果、日本経済の主力となる自動車産業でさえも脱ガソリン車などの流れの中で変革を余儀なくされる状況に直面しています。

 

山梨県経済も、そうしたグローバルな変革のうねりの中で、地域経済を巡る環境変化に対してスピードアップをつきつけられているのではないでしょうか。

 

感染症により、我々は、人流の減少・抑制に直面しました。

 

高齢化・人口減少は、何もしなければ、じわじわと顧客の減少、労働力の不足といった形で我々に問題を突きつけるでしょう。じわじわと進行するので、ふと気が付くと深刻化している怖さもありそうです。

 

良く考えてみると、感染症も高齢化・人口減少も我々への影響という意味で根っこは同じような気がします。

しかしながら、前向きに考えてみると、高齢化・人口減少が深刻化する将来の一端を、感染症によって体験したとも言え、今後到来するであろう社会に向けて「準備をする時間」を得たとも言えます。「時間」以上に重要なものはありません。

 

既に、県内では、デジタル技術などを活用した生産性の向上、高齢化・デジタル社会を展望した業態・業種転換、脱炭素に向けた水素・燃料電池分野への参入、高付加価値化サービスへの転換、農業の6次産業化などの取り組みが始まっています。
また、経済産業省の事業再構築補助金などを活用して、多くの企業が新しい分野への挑戦、新しい価値の創造に向けて、スピード感をもって、挑戦を開始しています。

 

環境が大きく変わる状況では、一歩先んじて変化に挑戦し成長を実現していくことが重要となりますが、起業家を輩出する起業風土の醸成と支援も徐々にではありますが高まりつつあると感じています。

 

しなやかに形を変えつつ、時代が求める財・サービスを提供し、山梨県が高齢化・人口減少社会でも一段と輝いていくことを願って止みません。