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経済人のコラム 時局寸評

TOP 経済人のコラム(時局寸評) 八ヶ岳時代到来に向けて

八ヶ岳時代到来に向けて

 私の住む街は高根町清里。私は今年51歳になりました。
半世紀を生き、最近ますます強くこの町が誇りに思えるようになってきました。なぜそうなったと申しますと、本を通して先人達に会うことが出来たからです。

 一冊は「政治的良心に従います-石橋湛山の生涯」(江宮隆之著・河出書房新社)。
この手の本で泣かされたのは久しぶりです。石橋湛山先生も、いま私が毎日見ている山々を見て育ったということ。
氏は甲府第一中学校時代に、札幌農学校(北海道大学の前身)第一回卒業生で、有名なウイリアム・クラーク博士から直接薫陶を受けた大島正建先生から指導を請けたことー
その大島先生の言葉が本の中にこう書かれています。「皆さん、私はクラーク博士から二つのことだけを言われました。それは「ボーイズ・ビー・アンビシャス」そして「ビー・ジェントルマン…」それです。いま我々に失われていること、ビー・ジェントルマン。常識なのか、良識なのか、正しいのはどちらか。

 もう一冊は「朝鮮の土となった日本人-浅川巧の生涯」(高崎宗司著・草風館)。
そして三冊目が「白磁の人」(江宮隆之著・河出書房新社)。
この二冊には、私達の町で育った二人の先輩が出てきます。浅川伯教・巧兄弟。この兄弟は大正の初めに日本の支配下にあった朝鮮に渡り、朝鮮古陶磁に魅せられ朝鮮を愛し、朝鮮人からも愛された人です。そして私達の町には、アメリカから来たポール・ラッシュ博士がいます。何と凄い先人達がいたのでしょうか。その人達によって開かれた町-私は何か身震いを感じます。いままで「観光地をつくろう」「活性化とは?」など議論してきましたが、一番大事なことは、人間愛の追求、それが町づくりなのではないかと思うようになってきました。一人一人、そこに住む人が笑顔で日々物事に感動していきること、感謝して一日が終わること、そんな人と人との交流の場が、私達の町であったなら…歴史的に見ても、アメリカと私達の町、朝鮮(韓国)と私達の町の繋がりを考えると、いま我々がやらねばならないことが見えてくるような気がします。共生の時代―。全てのかかわりのある人物と対等の立場で優しさを忘れずに生きること。感動と感謝が勇気になることを忘れずに生きること。そうすれば、いろいろな夢が生まれてきます。皆で協力して何かをやろうという気持ちにもなってきます。我々の八ヶ岳高原は「八ヶ岳活性化研究会」という会を発足させました。四つの町村に広がる大地(いままで町村の境界がないわけではなかった)、いま、この大地を愛する人達が、境界を取り払って何が出来るのかを考え始めています。近い将来、必ずや八ヶ岳時代が来ると思います。経済的な成功ではなく、人々がその地に行きたいと願う、誇り高い大地として。