経済人のコラム 時局寸評
甲府駅に降り立ってみると?
この夏、JRの「18きっぷ」で何回か日帰り旅行をした。
普通列車限定で乗り放題という切符である。
ある日は、甲府駅を朝6時に出発、松本→長野→直江津→糸魚川→松本→甲府のルートで、乗り換えること8回、乗車時間だけで10時間。謙信公の春日山城や塩の道などを訪ね、甲府に戻ったのは夜8時を過ぎていた。
また、別の日には、甲府→塩尻→中津川→名古屋→豊橋→飯田→岡谷→甲府と回り、こちらは乗車時間13時間の長旅であった。
普通列車の旅では、乗り継ぎの際に次の列車が1時間後ということもあり、待ち時間に駅周辺を散策することになる。実はこれが大きな楽しみなのだ。
今回も多くの駅の周辺を観光したが、どの駅でも、駅前の観光案内所に行けば待ち時間に応じた見どころ、食事処、お土産品などを親切に教えてくれる。また駅の建物や駅前広場は、そこがどんな土地なのかイメージできるように整備されている。
山なみや海を眺望できる駅、土地の歴史や文化に彩られた駅など、まさにさまざまであるが、旅行者はそれぞれの土地を実感することができる。そのささやかな感動を誰かに伝えたい、機会があればまたゆっくり訪れてみたいと思うのである。
さて、わが県の玄関口、甲府駅の場合はどうだろうか。
観光案内所は、場所が分かりにくいうえ、あまりに狭くて情報も少ない。駅からは美しい山々も舞鶴城も望むことができない。南口の駅前広場は雑然として統一性がなく、片隅の信玄公もどこか所在なげである。
降り立った旅行者が、“山の都”甲府、自然と歴史に恵まれた山梨県に来たことを実感し、それを誰かに伝えたい、また訪ねてみたいとはたして思うだろうか。
ここは何とかしなければいけない。
甲府駅の北口については、ペデストリアン・デッキの整備が進み、文化歴史施設への玄関として恥ずかしくない姿へと変ぼうしつつある。水晶のモニュメントという“宝石の街”甲府にふさわしいスポットも登場した。また、市内中心街の再開発も遅まきながら動きだしている。
次は南口である。幸いなことに、県も甲府駅南口周辺の景観整備に乗り出し、現在、県民からの意見を募集中である。
皆さん、「自分は車しか乗らないから関係ない」などと言わずに、山梨県の顔ともいえる甲府駅の南口が友人知人に自慢できる姿に生まれ変わるよう、声を上げてはいかがでしょうか?