経済人のコラム 時局寸評
山梨の「魅力」と「未力」
着任して約2カ月。この間、ヒアリングなどで県内各所を訪れたほか、休日には趣味で古刹巡りもした。
山、土、水に恵まれた豊かな自然、おいしい果物、奥深い史実を秘めた旧跡など、山梨の「地としての豊かさ」にあらためて感動した。そして、自然に包まれ、育まれていくような幸福感を覚える。
白州の道の駅で湧水を飲むにつけ、明野でヒマワリを見ながら完熟トマトをかじるにつけ、新鮮な喜びを感じる。
ふと、退職したら、山梨で畑を耕し、移り行く四季の富士をスケッチブックに収めてみたいという気になる。山梨を訪れた人の中には私のような思いを抱く人も少なくないと想像する。
しかし、現実は少し違うようだ。
県の「常住人口調査」(2011年)によると、人口は85万8千人と2000年をピークに減少が続いているほか、若者を含む2千人規模の転出超過が生じている。県内に魅力的な就職先がないということだろうか。
一方、甲州ワインのブランド確立に向け、ぶどう作付面積の拡大を担う若手がいないとか、機械・精密機器のメーカーでは次代の技術開発を担う人材がいないといった話を聞く。
県内には世界の最先端に挑む技術力もあれば、豊かな農産物や観光資源もある。再生エネルギーを生かす環境技術も根付きつつある。
問題は、これらを商品化し、発展させるビジネスモデルをいかに創り出すかである。
山梨の秘めたる「未力」を現実の「魅力」に転換できないだろうか。こうした問題意識から、私見を数回に分けて披露させていただこうと思う。荒唐無稽は百も承知ながら、各所で談論風発な意見交換が行われるきっかけになれば幸いである。