-市町村合併が、地域共同体の未来を拓く- 山梨経済同友会 平成13年9月 目 次 1.まじめな首長さんは本当に悩んでいる! 山梨県のある首長さんに登場してもらいます。
この首長さんだけではなく、地域を真面目に考えている人々は、21世紀初頭のこの時期、地域衰退に向かうのか、それとも新しい地域発展に向かうのかの瀦戸際だと感じているでしょう。 実際に、国による財政支援は今後期待できません。地方自治体への補助金の一つである地方交付税交付金の削減が強調されています。国と地方の借金は、約666兆円(2001年度末)。一人当たり約555万円、四人家族では一世帯当たり約2,220万円となります。 市町村は、これまでもさまざまな努力を行っています。しかし、その枠組み自体が変化すれば、努力にも眼界があります。国と地方の財政の極度の悪化です。税金を上げることやサービスを低下させることも選択の一つです。しかし、とくに自主財源が低い地域は、高齢化が進行し、どちらの選択も採用できません。なぜならば、年金生活者から高額な税金を徴収することはできないし、逆に介護福祉をはじめ高度なサービス供給への要望は高まってきているからです。 市町村の状況は、すでに悲惨な状況です。極端な例をだせば、借金である地方債の返済額(公債費・一人当たり)が、自治体独自の財源である地方税額(一人当たり)を超えている自治体は、牧丘町、三富村、大和村、芦川村、三珠町、六郷町、下部町、鰍沢町、中富町、早川町、身延町、芦安村、明野村、白州町、武川村、秋山村、道志村、足和田村、小菅村、丹波山村、一人当たりの返済額が、一人当たりの地方税額の2倍以上となっている町村)。これに類する町村も多くみられます(山梨県『平成10年度 頸似団体別市町村財政指数表(平成11年度版)』2000年)。 解決法として、市町村合併があります。2005年までは特例法が適用されます。住民の参加によって議論するとすれば、今がチャンス。合併をしないとすれば、住民も痛みを分かち合うというレベルを超えて、むしろ過疎地域では町村によるサービス自体がなりたたなくなるでしょう。
注:例えば、人口3万人-5万人の自治体では、一世帯公債費は188万円、人件費352万円であるのに対して、たとえば1千人-5千人の自治体では、一世帯公債費は552万円、人件費616万円である。これらの自治体では、公債費では一世帯当たり364万円、人件費では264万円の差がある。地方交付税の相違により、それぞれの世帯の負担の実質の相違とはいえない。しかし、規模の小さい自治体の方が、借金が多くあること、税金がより投入されていることは事実である。なお、一世帝を4人家族として計算している。 2.この時期を逃したら危機脱出は困難 -反対する人は合併以外のどのような解決策があるか提示を- 今度は別の首長さんに登場してもらいましょう。
消極的な見解や批判的な見解を持つ方々は、なんら選択肢を示していません。本年2月に南巨摩郡南部町と富沢町の両町長によって合備にむけて動きだそうとした際、「富沢町議会からの『時期尚早』の声で協議会設置は棚上げ」されました(山梨日日新聞2001年5月28日付)*。 議会議員は、たしかに合併に対して消極的だといわれています。それぞれが代表する地区の利害が通りにくくなること、住民がまだ知らない、ということを主張します。議会議員の数は合併によって減少します。そこの不安を感じている議員もいることでしょう。しかし、議員が地域に責任を持つならば、この財政状況の時期、住民とともにこの危機を乗りきる積極的な提言をまとめあげることでしょう。既得権に固勤しないとすれば、合併以外どのような選択肢があるのでしょうか。 今議論しなければならない理由は、財政危機の深刻さだけではありません。合併特例法による優遇措置が、2005年までとなっていて、この措置を活用するとすれば、本年が「議論を具体化させる正念場」の年となります(総務省)。合併に必要な制度である合併協議会設置から合僻まで少なくとも2-3年必要で、その協議会までも時間がかかるからです。 *その後、富沢町議会は、南部町が身延町との合併を優先させる意向を示したことで、急遽合併協議会の設置を急いだ。
出所:総務省資料(抜粋) 注:合併が行われた日の属する年度及びこれに続く10年度について、合併前の合算額を下らないように算定し、その後5年度については段階的に増加額を縮減する。 3.住民が参加できるはじめての改革 -日本初・民主主義の壮大な実験- 首長さんは財政危機を視野に入れながらも自治体改革として合併に取り組もうとしています。
今日、明治維新、戦後改革につづく第三の改革としての行政改革が行われています。行財政改革と地方分権改革です。市町村合併もその中の一つです。 ここで提案している市町村合併は、単に規模を大きくするという次元ではありません。また、市町村合併によって、そのことだけで地域生活が向上するというものでもありません。合併の主な目的がまさに財政問題にあるからです。しかし、合併を自治体改革のよい機会として、慎重に議論し大胆に実行することができます。 新しくできる市町村には、どのようなサービス提供が必要か。その場合、どのくらいの費用が妥当か。 地域をよくしていくのは、市町村といった自治体だけではないことを確認することも必要です。自治会・町内会といった地域組織、福祉や環境に積極的に活動する企業、公的な役割を担おうとするNPO、あるいはこれらを支援する企業や労働組合、これらが緊張関係を保ちつつ協力しながら地域をよりよくしていくわけです。自治体は、もとより「お上」ではありえないし、そうした動きを支援する場として機能することが期待されています。 地域住民が自分の政府をつくる作業にかかわるはじめての経験をします。合併後に住民の自治を保障する制度を設定できます。たとえば、合併前の役所・役場を支所、出張所として「ミニ役所」として活用したり、合併前の市町村を中心に住民参加組織としての地域審議会を設置した沸くり…さまぎまな自治体改革が可能となります。 議会や首長が消極的な地域では、住民自身が市町村合併の歯車を回すことができます。有権者の2%以上の署名による直接請求です。こうした手法を活用しつつ、さらには住民投票も想定されます。 合併によってすべてがバラ色となるわけではありません。財政危機状況を機会に制度の洗い出しを住民主導で行おうというものです。功罪ともに住民自身が担おうということです。21世紀の政治と行政は、むしろ住民自身が選択することが重要になってきています。壮大な実験に今私たちが立ち向かう時です。 (手続きの主な流れ)
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