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(31.2.28)「山梨の観光の現状と将来の展望」講演会

標記につきご報告いたします

山梨リニューアル委員会
委員長 金澤 悟
富士山部会長 原田由起彦

日時 平成31年2月28日(木) 13:30より

会場 甲府富士屋ホテル 2F「桃源」

講師

佐久間孝幸氏( ㈱KNT-CTグローバルトラベル訪日FIT支店課長)

遠藤 仁氏( ㈱近畿日本ツーリスト関東 甲府支店長)

 

内容(佐久間孝幸氏 講演要旨)

1. 2018年の訪日外国人数(日本政府観光局)

(1)3119万1900人(前年比+8.7%)⇔(620万人(2011年))

統計開始以来の最高記録
(2)国別比較(対前年数・伸び率%)
中国 8,380,100人(7,355,818 +13.9)
韓国 7,539,000人(7,140,438 +5.6)
台湾 4,757,300人(4,564,053 +4.2)
香港 2,207,900人(2,231,568 -1.1)
米国 1,526,500人(1,374,964 +11.0)
タイ 1,132,100人( 987,211 +8.2)
豪州    552,400人(   495,054 +11.6)
比国    504,000人(   424,121 +18.8)
マレ    468,300人(   439,548 +6.5)

2. 政府目標と方針(2016年3.30発表)

観光立国推進基本計画(閣議決定:2020年⇒2030年
〇訪日外国人旅行者数 4,000万人⇒6,000万人
〇訪日外国人旅行消費額  8兆円⇒15兆円
〇地方部への外国人延べ宿泊者数 7000万人泊⇒13000万人泊
〇外国人リピーター数  2,400万人⇒3,600万人
〇日本人国内旅行消費額 21兆円⇒22兆円
目標設定のための施策
①国際競争力の高い魅力ある観光地域の形成
●文化財・歴史資源・自然の活用、都市間交通結節による地方創生回廊完備
②観光産業の国際競争力の強化及び人材育成
●観光経営人材育成
③国際観光の振興
●訪日プロモーション実施、通信環境整備、観光情報の充実、多言語化
④観光旅行の促進のための整備
●災害被害軽減等

~訪日外国人の関心と満足度から見る山梨県観光の将来の展望~

3. 訪日旅行における関心について

訪日前に最も期待していた事~日本食、景勝地観光、ショッピング、テーマパーク等
訪日でした事、次回したい事~日本食、温泉、ショッピング、景勝地観光、文化体験
出発前に得た旅行情報で役に立ったもの~ブログ、SNS、知人、口コミサイト、HP
日本の受入環境に関する満足度~コミュニケーション、無線LAN環境、多言語表示

4. 山梨県のインバウンド事業について

(1)山梨県のインバウンド需要

山梨県は富士山観光をフックにインバウンド需要は上位にあるが、消費金額は全国最低ランクにあり、また富士山以外の観光商品や観光資源の開発が必要。
■インバウンド訪問率     5.5%(全国12位)
■インバウンド訪問数   1,322,148人(12番目)
■インバウンド宿泊者数  1,372,560人(11番目)
■インバウンド平均宿泊日数   1.8泊(長野:6.5、静岡4.7)
■インバウンド消費金額   8,442円(46番目)
■フリーWi‐Fi対応    2,138施設(23番目)
■外国人対応案内      19施設(16番目)
■案内表示の英語対応    75%以上(国内有数)
■おもてなし事業者登録   49件(43番目)
■免税店舗数        171店舗(33番目)

(2)山梨県に来ている訪日外国人の割合

■中国(65.18%)、台湾(8.84%)、タイ(6.15%)、香港(1.95%)、マレーシア(1.66%)、韓国(1.54%)、シンガポール(1.26%)、インドネシア(1.19%)、フィリピン(1%)
その他(11.23%)

(3)山梨県のインバウンド関心・需要に対してのSWOT分析

強味
豊富な温泉、自然・景勝地(富士山ほか)、様々な宿泊施設
歴史伝統文化、四季の体感(紅葉・雪・花)、
国内有数の外国語案内対応率、ぶどう・桃など質の良い特産品
機会
ラグビーワールドカップ(2019年)、東京オリパラ(自転車ロード)
甲州ワイン、リニア中央新幹線開業
アジアでのスキーブーム(2022北京冬季オリンピック)
弱み(次回したい事、インバウンドデータから)
欧米人が好むナイトライフスポットがない
ポップカルチャー発信がない、インバウンド消費金額最低ランク
旅行者にとって交通が不便
脅威
自然災害(全国)、富士山周辺に偏ったインバウンド需要
90%を占めるアジアからの旅行客
観光産業における人材不足(多言語対応)
近隣県のインバウンド対策

5. インバウンド地方誘致の事例

(●事例1~各県・地域の事例を見る

長野県
【特筆】ネイティブスピーカーの雇用、インスタ映え、アクセス利便性の高さ
〇外国人観光案内所整備、案内表示の英語対応の整備がしっかりしている。
〇観光資源が豊富な長野県。中でもスキーリゾート(白馬、野沢等)として豪州・台湾人気が高い。

〇ホテル、民宿に長期滞在(夏季は学生、冬季はインバウンド)
島根県
【特筆】バス助成、受け入れに向けたサポート、動画配信等
〇「外国人観光客誘致事業補助金」~かかるパンフレット、視察、免税店整備やWiFi整備等にかかる費用の助成。限度額20~50万、補助率1/2。
香川県
【特筆】お遍路人気、うどん県(体験を含む)としての情報発信
〇「瀬戸内国際芸術祭2016」(春・夏・秋実施)をきっかけに香川県のインバウンド誘致を推進
〇フェリーの発着地:高松を拠点にした島巡り芸術祭イベント
福岡県福岡市
〇志賀島周辺のサイクリングに着目、外国観光客に志賀島の飲食店向け割引クーポンを配布。
宮城県石巻市
〇インバウンドに無料SIMカードを配布、インターネット(SNS、口コミサイト)で情報発信をしてもらう
〇外国人誘致対策に成果を期待大
事例1より

訪日外国人観光客を地方都市に集めるには、そこに暮らす人々や国が一丸となってアピールしていく必要がある。例えば、自然を味わえるネイチャーツアーや、歴史的な景観を楽しめるスポット、注目を浴びている酒造見学など。
これらの観光資源のアピール方法を工夫することで、多くの人々に興味を集められる。
地方都市を活性化させるためには、まず自分の暮らす街に何があり、何に興味を抱くのか、よく分析することが大切。

(●事例22018インバウンド人気上昇県ランキングを見る(楽天)

1位 鳥取県(前年+189.6%)
2位 福島県(前年+184.6%)
3位 岩手県(139.4%)
4位 新潟県(+138.1%)
5位 山形県(+130.9%)
鳥取県
アニメ由来の空港名「米子鬼太郎空港」「鳥取砂丘コナン空港」2つを有し親しまれる。2018年末からは、香港国際線を増便。
鳥取砂丘は、パラグライダー、ファットバイクなどのアクティビティに集客人気。
他府県との周遊観光も積極的に促進、外国人向けに鳥取=大阪間の高速バスの割引キャンペーンを実施、アクセス向上。島根県とは「緑の道~山陰~」ウエブサイトに注力。
福島県
JR只見線(会津若松駅(福島)=小出駅(新潟)間)は、「世界で最もロマンティックな鉄道」としてSNS上で話題(中国、台湾、タイなど)に。
桜の名所として「福島・二本松」や「花見山公園」、「三春滝桜」が人気に。
岩手県
玄関口である「いわて花巻空港」に昨年台湾との国際定期便就航、台湾からの宿泊が好調。
「安比高原・八幡平・二戸」エリアが+453.8%と好調、自然とスキー客人気。
多国籍のスタッフを積極的に採用、多言語対応に取り組む。

事例2より
●2020年には東京オリパラを控え、増々外国人観光客の増加が見込まれる。
インターネットを利用したSNSや口コミサイト、個人ブログ、ホームページを多言語で作成するなど、インバウンドに地域の魅力をアピールする方法が手軽になっている。
●訪日外国人に対し、山梨県への関心をより一層高めるために、地域の強みや弱みをとらえ、ターゲットとする国・地域を選定し、訪日回数や旅行形態のほか、多種多様なニーズの把握と継続的な調査が重要。

 

内容 (遠藤 仁氏 講演要旨)

インバウンド需要を見ますと、山梨県は、インバウンド訪問率や訪問数・宿泊者数は全国的に見ても12番目と非常に高いのですが、宿泊日数が圧倒的に少なく(1.8泊)、これが消費金額の低迷(46番目)の原因になっています。この宿泊日数が長野(6.5泊)・静岡(4.7泊)並みとなれば、交通、宿泊、立ち売り施設を含めた観光施設における消費金額も相当上位になると思います。

山梨県は東部富士五湖地区への訪問客はほとんどがアジア圏で、河口湖ではインバウンド客の消費の方が多いことから、アジア向けに特化している施設もあります。

1.8泊の理由の中には富士山観光のみのケースや、あるいは新宿からの日帰り客もあります。これが現状ではないかと推察します。国中にも観光拠点が多いかと思いますが、私どもではもう一泊(滞在型)増やせないかという形で関係者とお話しています。
SWOT分析を踏まえますと、インバウンド観光は、いくら良いところでも交通の便が大切で、空港を持っている県は、例えば茨木県ではLCCの利活用・働きかけに力を入れています。また、当社では、全国食品関係や観光地の方を招いて先日ベトナム(ホーチミン市)でジャパンベトナムフェスティバルを開催しましたが、30万人の来場者との交流の中で、日本食に対するリピーター・関心が最も多いと感じました。ほかには、観光地として突出しているわけではないけれども、大阪・京都含めて関西や九州は中国・韓国から近いこともあり、観光訪問者が多いです。山梨県がこれからどうすればインバウンド客をさらに取り込み、滞在し、消費してもらうかについて、強み弱みを含めて検討していければよろしいかと思います。
当支社では、お客様に宿泊を手配した後、山梨の強みを検索・予約ができるシステムを開発中です。フルーツ王国山梨の収穫期以外の観光についても各自治体と相談しながら進めています。また、交通の便が良くなると、スポット観光のみで、例えば富士山だけ見て帰ってしまうようにならないように、夜のイベントが大切です。宿泊、夕食がセットになったナイトライフスポットの提案を考えていきます。機会では早晩オリンピックへの関わり方を県と関わりながら進めていきたいと思っています。脅威は、富士山噴火があげられますが避けられないことであり、もし起こっても後の先々まで考えた対応をすると地元の方はおっしゃっていました。

質疑応答

(問) リニア時代を見込み、LRTを活かして県内の鉄軌道を結ぶ二次交通網の提案を行っています。山梨以西の観光客は10%しかなく、山梨県にとってインフラ整備が大切と考えますが、如何ですか。

(答) リニアの駅と、富士急行線・身延線・中央線が一体化すれば、周遊・滞在型にひと役果たし、リピーターも増加すると思います。定住人口増加も見込めるでしょうし、実現してほしいと思います。業界では、観光招聘には交通の至便さが第一と考えています。

(問)滞在型宿泊を増やすには、モデルプランのようなものがありましたらお聞かせ願いたい。

(答)インバウンドの観点からすると、ナイトライフプランがあげられます。またスイスの登山電車中心の魅力的な街づくりもあり、富士山の持つコンテンツをもっと利用できるのではないかと思います。また、長期滞在には夕食は自分で選びたい(泊食分離)ケースなどもあり、様々なニーズ対応やリピート対応も取り込むべきと承知しています。

(問)長野・静岡に比べて消費金額が少ないのに驚きました。宿泊日数の少なさは、どう解決するのか、消費が少ないのは土産(安い土産から貴金属のような高い土産)に起因するのか、観光面からみて教えていただきたい。

(答)新宿で連泊し、JRパスを持って日帰り周遊観光する、あるいは関西での連泊は日帰りで広島観光するなど、観光先に滞在しないで一か所に帰るような、無計画旅行・自由旅が増しています。ネットで天気予報を見てからの需要が増えていて、都市圏に近いのが弱点になっているケースがあります。また、欧州人は90日旅行する際はトリップアドバイザーのクチコミで計画を練ることから、これらを踏まえて、ネットで山梨の情報を伝えることがテーマと思います。何れも多くの方が泊食分離、周辺情報を参考にします。プラスアルファのコンテンツを持っている地域が連泊に強いですし、連泊経験が必要(スキー)な場合も滞在型になります。山梨のお土産はシャインマスカットが特に売れます。貴金属もメイドインジャパンを打ち出していくことで消費されます。ご当地土産や特産品もSNSの影響もありますので、国ごとに戦略を練って対応していくのが良いと思います。

(問)富士山周辺の施設はどのようなものが考えられますか。

(答)訪問地や施設および消費の選択する場合は、ご当地も含めて多言語対応の効果は絶大と言われています。ナイトライフに関しては、例えば、野沢温泉は(雪灯り)立ち飲み、新宿では思い出横丁の人気が高く、日本的な情緒経験を好む(外国にない)傾向が強いです。長野は、大きくスキー、温泉、スノーモンキーですが、志賀高原は修学旅行メインに加えて短期泊を海外に情宣し、白馬、野沢に加え志賀への顧客が増えています。志賀・地獄谷温泉への往復は交通費も嵩みますが、長野の施設を見ますと殆んどプラスアルファの滞在リピート型ですので、そうしたことから滞在も消費も大きいと思います。

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(文責:事務局)