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TOP 経済人のコラム(時局寸評) 「輝きのスポット」完成を感謝して

「輝きのスポット」完成を感謝して

 2005 年のリニューアル委員会は細谷憲二委員長、飯野裕二提言推進部会長のもと、観光立県・山梨の玄関口甲府駅の機能向上に向けてリニューアル計画を考え検討する事を事業として取り上げ、まず委員会メンバーが甲府駅に降り立った観光客の目線に立って甲府駅及びその周辺を視察し、問題点を確認し、それぞれ具体的内容を沿えて次の3 項目について提言しました。
① 観光地らしいウェルカム・ムードの醸成 (提言3 項目)
② 観光案内の各種インフラ整備 (提言5 項目)
③ 観光スポット等へのアクセス面の整備 (提言5 項目)

 以上まとめた提言書2005 年10 月山梨県、甲府市、甲府駅始め関係団体と会い、提言内容を説明し、手渡しました。それが甲府駅北口モニュメントの『始まり』でした。
その提言書の①の項目の中で、望月政男様より「駅周辺の歩道に宝石類(メノー・水晶・アメジスト等)を敷き詰め宝石道路を造る」ことが提案されました。それから紆余曲折しながらこの事業が進化していきました。

毎月行われた委員会そして提言推進部会も6 年間で約60 回開催され活発な議論をしながら検討されました。

基本構想のコンセプト

(1) 山梨県の玄関口として、観光客、県民、市民に感動を与えるものにする。
(2) 宝石の街甲府を象徴するようなものにする。
(3) 若者に愛されるような雰囲気のある光り輝くスポットにする。
(4) 観光客を始め多くの人々が写真を撮りたくなるようなスポットにする。

モニュメント構想の推移

甲府駅改札を出た所に多くの観光客が感動するものを創ろう、そして宝石の街甲府をイメージするものを創ろうとした最初の案は次のものでした。
第1段階
甲府駅の改札口を出た自由通路に巾30cm長さ20m位のジュエリーロードを作る案がまず企画され検討されましたがインパクトが弱く、感動を覚えるようなものでないという事で再考する事になりました。
第2段階
改札口の出入口付近のフロアーに長さ7mで12 角形の大きさのスポットの中を12 マスに仕切り1 月から12 月までの誕生石を深さ10cm位のケースに入れ、その側面から光を当て照らすものでした。
この案をそのフロアーの管理者JR に提案し、JR 八王子駅の高野支社長に首藤副市長、飯野部会長、原幹事で説明に行き、お願いしたのですが、JR からは設置費用、維持経費、使用料の話しが出て、我々としてはとても対応できませんでしたので断念しました。
第3段階
甲府駅南口の階段を降りた屋根の下のスペースを次に考えました。
このスペースは県が管理者ですので費用的な部分をクリアー出来そうでしたが、雨の日の泥とかほこりでジュエリースポットのフロアーが汚れ、光り輝くスペースにはならないと判断し、あきらめました。
第4段階
それから委員会も方向性が見い出せず、暗礁に乗りかかってしまうかと思った時もありました。

 2007年10 月甲府市の首藤副市長(当時助役)より、甲府市で計画している甲府駅北口開発区域の一画にペデストリアン・デッキ(歩行者自由通路)の説明があり、その一画に当方で検討中のジュエリースポットを取り込んでは。との提案を受けました。
そのスペースは37mX21m(約777 ㎡)の面積があり、今後 具体的な使途を詰めていくとの事でしたので、リニューアル委員会としても、当初案の改札口前に次ぐ好条件の立地として判断し、また甲府市と民間の官民共同事業としての取り組みができる事業と考え、同案に沿った方向に検討の舵を切りました。

具体的な構想

リニューアル委員会の提言推進部会では、金田一弘雄部会長を中心に具体的な構想を練り、2 つの要素を取り入れました。
まず(1)このスペースに観光案内機能を付与するとの市の構想にも沿って、最新の県内観光情報を取り出せるタッチパネル式の電子ディスプレイを設置する。
(2)「宝石の街・甲府」をイメージするもの。として、ジュエリースポット構想を練り上げました。その内容は床面の台座(4.3mX4.3m)の中に宝石を敷き詰めた上で、その中心に1.4m角で高さ3.5mのガラスケースを建て、この中に宝飾及び葡萄を題材とした造形物を設置するというものです。
照明に付いては床からと天井からのLED 照明で光り輝く様にしようと考えました。
 この「輝きのスポット」の最大の趣旨は、山梨・甲府の観光名所や名産品を来訪者に知っていただく「情報の玄関口」としての機能と観光客を感動させたり、これを背景に写真を撮りたくなるスポットとなるとともに、若者達の待ち合わせ場所といった“名所”となる事を期待して、構想は練りあがりました。

「輝きのスポット」完成までの経緯

 甲府駅北口のペデストリアンデッキの一角にモニュメントを創る構想が同友会と甲府市の間で着々と検討され、この事業は民間が甲府市に提言し、甲府市がこれを受けて一緒に推進しようという官民一体の共同事業として取り組むのがキーポイントでした。

この案が経済同友会幹事会でも承認され、事業体は同友会だけでなく水宝連、ワイン組合、甲府商工会議所、観光連盟等、多くの団体で推進して行くことが望ましいとの判断から、「輝きのスポットを創る会」を設立する事となりました。

2008 年9 月、輝きのスポットを創る会準備会、同年10 月設立総会を開催し、役員は会長に上原勇七甲府商工会議所会頭、副会長に望月操三同友会代表幹事、井上善展水宝連会長、事務局長に原龍二同友会常任幹事が選出され、更に顧問として宇野善昌甲府市副市長、金田一弘雄同友会提言推進部会長に入っていただきました。

基本的会議の進め方は同友会のリニューアル委員会がいろいろな角度から議論し、タタキ台を作り、それを「輝きのスポットを創る会」が検討し、方向を決定していくスタイルをとりました。

 協賛金の募集

 この北口ペデストリアンデッキは既に甲府市から施工業者に発注され、工事も進められておりました。甲府市とも連絡を取りながら設計変更可能の限りこのモニュメント構想を組み入れて頂きました。
そして費用負担は工事のハード部分と維持管理費は甲府市が負担し、「輝きのスポットを創る会」がモニュメント及びLED 照明を負担する事となりました。
それから完成後の運営管理は甲府市から依頼された水宝連にお願いする事になりました。

 無から有を生むにはどうしたら良いか当初は企業200 社位から1口10 万円位を協賛していただき、個人会員を500 人くらいに1万円お願いして2,500 万円位を目標にして募金活動をしようとリニューアル委員会に企った所、多くの委員から異議が出されました。
この厳しい経済状況の中、企業協賛は得られないのではないか、そして官民共同の事業なら多くの市民、県民に呼びかけ、広く浅く集める方法はないか検討することになりました。

 そこで出てきた案は、モニュメント会員を募集し、その会員には会員としての特典を付加するものを考え、モニュメントへの参加意識を共有してもらおうというものでした。
最終的にはモニュメント会員は1口2,500 円で、その会員には水晶と甲州印伝を組み合わせたオリジナルストラップを進呈し、IC チップを内蔵したストラップをモニュメント横のテーブルにかざすとモニュメントとステージが輝き、光と音による演出が楽しめる仕掛けとなっています。
更に会員には市内ホテル(富士屋ホテル・古名屋・談露館)のレストラン割引とディズプレイパネルの銘板に名前を残させていただく事としました。
 その募集方法が多くの方に共感を得て、4,100 人を超える会員から約4,700 口の協賛を頂く事となりました。一方企業協賛も307社から約1,450 万円の協賛金が寄せられ、目標の2,500万円を超える約2,600 万円の協賛金が集められた事はこの事業にとっても大きな力となりました。またそれ以上に多くの方々に広く理解され協力して頂いた事は多くの方々に支持されたものと実感した次第です。

 

モニュメントの設計と設置

 リニューアル委員会でモニュメントの形、大きさ、内容が具体的に検討され、それを基に佐野建築研究所の志村浩男所長が設計図としてまとめました。
「輝きのスポットを創る会」では更に、モニュメントの水晶玉の種類、大きさ、カット面等について議論され、最終的に大きさ1.2mの球状で透明水晶 約6,200 個で32 面刷りの15m/mの大きさの水晶を使い、内部に葡萄をイメージした部分を約900 個の紫水晶(アメシスト)の丸玉を使ってフロアーから8 ヵ所よりLED による照明で光り輝くものにしていく事となりました。

そしてフロアーは強化ガラスの床の下に、約1万個の水晶のカット石を敷きつめ、それをLED のテープライトで下から照らし数多くのパターンに変る輝くステージを考えました。

設置は水宝連の研磨組合の若手技術者が水村理事長深沢リーダーのもと30 余名が6月から7月の猛暑の中、仕事が終わってからかけつけ毎晩7 時から10 時過ぎまで狭いスペースの中、天井裏から細いワイヤーを通し、そのワイヤーに1個1個位置を決めながら7,000 個以上の水晶玉を円球に仕上げていく作業を丁寧に仕上げ、7月13日最後の水晶が止められた時は全員で拍手し、完成を祝福しました。(本当にご苦労様でした。)

 

③ ディズプレイパネルと銘板

 モニュメント北側のフローリングの上には、水晶ディスプレイが設置される事となりました。
その大きさは巾4.92m、高さ1.9m、奥行き60cmで御影石の本磨きで重厚な展示ケースとなりました。その中心に水晶の原石を置き、水晶の美しさと冷たい感触に触れて頂き、水晶パワーを得てもらいたいと思っています。
ガラスケースの中に1 月から12 月までの誕生石を使ったジュエリーを陳列し、また水宝連の会員所有の素晴らしい工芸品を4 点飾りました。

ディスプレイの反対側は銘板として使い、協賛企業名307 社を中央に、その両サイドに個人協賛名やモニュメント会員名を表示し、協賛の思いを銘板に残せた事は多くの方々から評価され喜ばれました。またモニュメント制作に拘った技術者と研磨に協力してくれた山梨宝石学校の生徒の名前も掲示し、後々名前が残り協力した事を誇りにしてくれるでしょう。

そのディスプレイの正面中央に何故「宝石のまち甲府」になったのか説明文が掲示されていますのでここに紹介させて頂きます。

宝石のまち甲府

山梨は甲府市北部の金峰山麓一帯に鉱山群を有し、かつては全国でも有数の水晶の産地でした。山梨県の宝飾産業は、この水晶の加工から始まりました。江戸時代後期、京都の玉づくり職人によって水晶研磨の技法が伝えられ、同時に江戸文化の影響を受けた飾りの技術も入って来ました。明治20 年代頃には、水晶の採掘が最盛期を迎えるとともに、水晶工芸と飾りの技術が結びつき新たな発展をみました。明治の後期になると水晶原石の産出量が激減しましたが、大正時代にはブラジルからの水晶原石の輸入が始まり、それを機に山梨の宝飾産業は大きな飛躍を遂げました。その後、伝統的に受け継がれてきた高度な技術力に、時代に対応した新たな感性を取り入れ、山梨の宝飾産業は発展を続けてきました。甲府市内を中心に現在でも多くの宝飾関連企業が立地し、全国の約3 割を占める日本一の貴金属製品出荷額を誇っています。

モニュメント完成

 2011年8 月4 日甲府駅北口のペデストリアンデッキの竣工式を迎え、同時にモニュメントの除幕式も行われた。
宮島雅展市長から記念すべきこの北口開発事業に対して「甲府駅周辺のリニューアルは地域の発展に寄与する」と熱い思いが語られ、宇野善昌副市長から経過報告があり、ここに至る迄の話しの中で長い年月と難問山積の事業だった事を改めて痛感しました。

贈呈式ではまず「輝きのスポットを創る会」の上原勇七会長より甲府市にモニュメントの目録の贈呈があり、宮島雅展甲府市長から「輝きのスポットを創る会」に感謝状が授与されました。
除幕式では宮島甲府市長と上原会長がモニュメントの除幕と、光りと音のシステムのスウィッチオンしました。
そしてモニュメント北側のディスプレイパネルの除幕を望月操三副会長と菊島輝雄副会長がされ、いよいよ輝きのスポットが市民・県民に披露されました。
 多くの方々がこのスポットの光り輝くモニュメントとステージに感動され、光りと音の演出を楽しまれているのを見て、また多くの方々が憩いの場所として、待ち合わせの場所として利用されているのを見てこの事業を完成させてよかったと実感しています。

 

愛称の募集と発表

 輝きのスポットが竣工した当日から、このスポットにふさわしい愛称を募集しました。
この場所を憩いの場、待ち合わせ場所に活用していただき、多くの人から愛される場所になるようなネーミングにしたいと思っております。
幸い、9 月4 日に締め切りました所、1,549通の沢山の応募がありました。
ネーミングは、10 月初旬の選考委員会で決定し、10 月16 日の「甲府大好きまつり」のセレモニーの席で発表され、採用された優秀賞には高価なジュエリーが贈呈されました。
甲府駅北口の「輝きのスポット」の愛称は、下記のように決定しました。

愛称 「クリスタル アース」
甲府駅玄関北口の輝きのスポットが、新名所「クリスタル アース」の愛称で、皆様に親しまれる事を願っています。
選考委員の方々をご紹介します。(敬称略)
(選考委員)
上原勇七 (選考委員長・「輝きのスポットを創る会」会長)
望月操三 (選考副委員長・「輝きのスポットを創る会」副会長)
宇野善昌 (甲府市副市長)
松本順丈 (日本銀行甲府支店長)
鈴木郁子 (NHK甲府放送局局長)
尾崎祐子 (山梨県産業支援課課長)
深澤陽一 (モニュメント製作リーダー)

まとめ

「輝きのスポット」が8 月4 日に竣工し、夏休みやお盆と重なって大勢の観光客や帰省客がここを訪れて頂き、感動したり、光りの変化を楽しまれておりました。
また多くの若者が待ち合わせ場所に利用したり、多くの市民の憩いの場所になっているのを見て、これからの甲府の「新名所」になってくれるものと期待しています。

 山梨経済同友会のリニューアル委員会が小池雅彦委員長のもと6 年間、「輝きのスポットを創る会」が上原勇七会長のもと2 年間、ほとんど毎月会議を開き、多くの委員に出席して頂きました。両方の会とも出席率の高いのには感心しました。お陰様で多くの方々から貴重な御意見を賜り、充実した会議となりました。ご協力感謝申し上げます。
とりわけ望月操三様には、最初から最後の愛称決定迄6 年間、リニューアル委員会と輝きのスポットを創る会に毎月2 回すべての会議に出席して頂き、中心的な役割を果たして頂きました。また、モニュメント委員長として私が仰せつかった募金委員長と車の両輪の形で会を支えていただき、モニュメント完成の原動力となっていただきました。本当にご苦労様でした。
また2008 年7 月に赴任された宇野善昌副市長様と7 月25 日同友会の納涼会で初顔合わせして私達の強い思いを理解して頂き、固い握手を交わしました。2 年間信頼関係のもと甲府市との調整をして頂いたり、指導して頂きました。この事業推進の大きな力となって頂いた事に感謝申し上げます。

それから何といってもこの事業に協賛して頂いた多くの協賛企業と4,100 名以上のモニュメント会員のご協力はこの上ない大きな力となりました。当初広く浅くお願いしようといった募金活動がこの様に大きな輪になるとは思ってもおりませんでした。大勢のご協力ありがとうございました。その中でも東京電力、NTT東日本から企業協賛とは別にそれぞれ1,000 口以上ものモニュメント会員にご協力頂きました。心より御礼申し上げます。

 この事業を通じてこれからの街づくりは行政依存型の事業より今回のように市民が行政に提案し、行政がそれを受けて官民一体の共同事業が望ましい事を感じ、これからの街づくりの一つのモデルになる事を実感しました。
 最後に、リニューアル委員会がこれからも甲府駅南口のリニューアルへの提言、舞鶴公園周辺整備に対し、民間団体として行政と一体となって推進して、少しづつでも街づくりに貢献出来ればと願っています。