平成10年度 山梨経済同友会 通常総会提言3

観光委員会中間報告案


 

山梨経済同友会観光委員会  
委員長 舩木 上次
(1998年10月27日発表)





目 次

 

1.観光委員会の視点について



2.山梨の観光についての現状と課題



3.今後の取り組みの方向性





1.観光委員会の視点について

 極めて厳しい経済環境下にあって、わが国は、社会、経済構造そのものの変革を求められています。とりわけ、地方にあっては、引き続き公共事業の重要性はあるものの、地方分権による地域経済の一定の自立と民需の主導性が迫られています。
 こうした流れのなか、山梨県においては、その資源からみても『観光産業』が重要な役割を果たすことと思われます。県はこれを受けて『ビジターズインダストリーの推進』を提唱していますが、行政主導の施策、運動はともすると総花的、平板的になりがちです。 そうならないためにも、県内の経済界の有志が自由な立場から課題を分析し、民間の主体性を前提としつつ、課題解決のポイントについて提起をしたいと思います。


2.山梨の観光についての現状と課題

(1)本当に山梨は観光立県なのか?
 県は、「幸住県」計画において本県の特性を「恵まれた自然、景観」、「豊かで魅力ある文化資産」、「個性あふれる産業」、「国土軸上の交流拠点」であるとして、「活気に満ちた新たな出会いのやまなし」を基本目標のひとつに上げています。さらに、それの具体的施策のひとつとして「ビジターズインダストリーの推進」を謳っています。
 しかしながら、現実の方向はローカリティを年々失いつつあり、意識のうえでは、首都圏へ吸収されつつあるのではないでしょうか?東京、ことさら新宿に対する消費・文化依存度は高まっています。
 さらに、「地勢的」、「歴史的」、「社会経済的」な要因からか、山梨県の「誇り」、「精神的核」が必ずしも確立されておらず、「幸住県」計画に上げている本県の特性を県民全体で共有できていないのが現状といえましょう。
 その意味では、まず、県民自身が山梨をどう位置付けるのかの確認が必要ではないでしょうか。たとえば、首都圏の衛星都市的存在を選択するか?ローカリティを生かすか?ここのところを明確にするべきでしょう。すなわち、県の提唱するビジターズインダストリーの定義のなかに「豊かな自然環境や特色ある文化、産業など本県のアイデンティティを最大限いかしながら………」とありますが、県民にとって、山梨のアイデンティティとはなにかを明確にする必要があります。
 また、ビジターズインダストリーの考え方は、山梨独特の発想ではなく、普遍的なものですから、このことの競合性も考えておく必要があります。

(2)自画像と消費者からの像が一致しているのか?
 山梨の観光資源は山、温泉をはじめ数多くのものがあり、日本における有数な観光地には違いありません。しかし、現状では、折角の本県の特性を生かし切れていないことも含め、他の地域に決定的に優位なものが形成されているのではないことも事実です。首都圏の消費者からは安近短の観光地としての選択肢のひとつにすぎないというのが現状認識としては正しいのではないでしょうか。
 行き過ぎた自嘲と、県内ルールでものごとを動かそうとする自閉的傾向から脱却して、もう一度、県民皆で、観光資源の棚卸しをしてみる必要があります。世界に通じるもの、首都圏レベル、県内レベルなら通じるもの等を再検証し、山梨県の独自性と本物作りを考える必要があるといえましょう。

(3)地域宣伝はうまくいっているのか?
 山梨はいろいろな言葉で表現されています。「山梨ロマン街道」「環境首都やまなし」、「山の都」、「スコレー」、「宝石の街」、「農林休暇邑」、「果樹王国」と言葉は沢山並んでいます。それぞれ、言葉ができた背景、意義は大きいと思いますが、人を迎えるにあたっての山梨にとって核心が何なのかの理解が県民自体に浸透しているとは思えません。いわんや、首都圏の消費者には伝わっているとは言い難いのではないでしょうか。

(4)ソフトが弱いといわれますが………
 県内の観光業界ではソフト面の弱さが常に指摘されます。これはもちろん、技術的問題もありますが、それだけではないのではないでしょうか。県民が本当に山梨に「誇り」をもってるのであれば、自然と変わっていくはずです。心から県民が山梨の観光資源のよさの本質を理解すれば、自ずとソフトは改善されるという面もあると思われます。

(5)民と官の役割
県の施設、市町村の施設は機能の重複と中途半端性がつねに指摘されていますが、ばらまき、バランス型投資と形がみえる箱物主義からの脱却が必要であり、メリハリのある集中投資型への転換が必要です。
 また、温泉を中心に官主導の施設が陸続と完成していますが、これも経営的な課題をすでに持っているもの、今後背負い込む可能性のあるものなども数多いと思います。もう一度、経営感覚とプロデューサー感覚のある民の活用と観光施策における官の役割を見直すべきです。


3.今後の取り組みの方向性

(1)ハード面

 ビジターズインダストリーを推進していくためには、県全体のコンセプトとグランドデザインにメリハリが必要です。コンベンション、産業見学もすべて包含するのはいいのですが、またしても、ばらまき投資の火だねを残します。この県がビジターズインダストリーにもっとも力をいれるべきは何なのかを十分突き詰める必要があります。そしてそこに集中投資をすべきでしょう。なんでも包含することは、逆になにも定義しないのと同じなのです。
 その意味では、山梨の首都圏に対するポジショニングからいえば、自然との触れ合える町、歩ける街作りではないでしょうか。
 例えば、幸住県計画にも盛り込まれていますが、玄関口甲府には町中にもっと自然が必要です。すなわち、自然との懸け橋となるような、都市公園が必要であり、首都圏の衛星都市の顔から県の特性を表現する顔に戻すことが急務です。
 また、特性を生かすという点から言えば、ぶらぶら歩きのできる温泉街の再構築も必須でしょう。

(2)ソフト面

  1. 「県民の誇り」としての観光資源を効果的に活用するために
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    2. バルビゾン派に関する教育の徹底とイベント、街作り
      たとえば、折角、買い入れたバルビゾン派の素晴らしい絵画をもっと観光資源として活用しましょう。山梨は自然環境、産業・風土から考えてバルビゾン派が生活の中に根付く要素は十分あります。また、都市消費者から見た場合もその印象は一致します。しかし、上辺だけの利用ではなく、県全体がバルビゾン派について、本当に理解し、そのことで精神生活が豊かになっている必要があります。学校教育はもちろん、社会教育、街作り、イベントとすべてにわたり連動させましょう。
       
    3. 住民参加型の全県的信玄公祭り
      信玄公祭りやそれに関連するお祭りを、県民挙げてのものにしていきましょう。企業企画型から住民参加型へ、そして市町村毎に分散的に行うのではなく、県全体でお祭りにまつわる物語を作りましょう。それぞれのお祭りに密接な連動性をもたせ、宣伝活動もそれに従って統合的に行うべきでしょう。
       
    4. 山梨ロマン街道に神話、伝説と物語の付与
      物語作りは「山梨ロマン街道」にも必要です。単に平板にイベント、お祭りを宣伝するのではなく、街道毎に神話、伝説を拾い上げ物語を作りましょう。それを軸に観光案内、宣伝もし、お祭り、イベントを組み立てましょう。観光地にはイメージ作りが極めて大切です。
       
    5. 本物の作りとスター主義を
      旅行、観光が団体型から個人・グループ型に変わってきています。自然や文物をじっくり味わう旅や体験の旅が脚光を浴びつつあります。そのときこそ本物が必要となります。本物を実践している人々にスポットライトを当てる必要があります。これからは、その人でなければできないこと、その場でなければ体験できないことが尊ばれる時代となるでしょう。すなわち、ベストワンからオンリーワンです。
         平成12年にJR6社のディスティネーションキャンペーンが行われます。ひとつのチャンスではありますが、一過性としないためにハリボテ観光地ではなく、本物作りに投資していくべきでしょう。


  2. 観光教育の充実
    ソフト面の充実ということであれば、教育、研究が重要です。この際、その総本山となるべき観光大学を誘致してはどうでしょうか。実地トレーニングのセンター的役割とともにアジアの方々も受け入れて、国際交流の場となり、まさにビジターズインダストリーの最たるものでしょう。

  3. 高齢化に対応した観光地作り
    社会全体の高齢化により観光地の様相も変わってくるでしょう。ソフト面でもハード面でももっともっとバリアフリーを徹底していきましょう。「幸住県」であれは、居心地のよい人生第2期を楽しむにはもってこいでしょう。
      温泉もあれば、自然もダイナミック、果物も美味しいのですから、高齢者のロングステイ型リゾート地として最高ではないでしょうか。そのためには、高齢者の方々が自然と触れ合いやすくする工夫も必要でしょう。とりあえず中高齢者登山客に優しい県になりましょう。



(3)活動主体作り

 魅力ある観光地作りをしていくためには、民間の主体性がもっとも重要なファクターとなります。そのため、観光地作りをともに考え、行動する、各地域の業界団体や経済団体や市民団体など民間のネットワーク化を進めて行かなければならないと考えます。




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