農業復活のために


━━農業への参入を妨げているものは何か━━



 

山梨経済同友会産業政策委員会    
委員長 風間善樹
(1999年8月4日発表)
 
 
 
 
 



目 次
(はじめに)

(農業経営の参入に際しての障壁)

提言(参入障壁の解消策)
 
 



 
 

(はじめに)
農業の復活について議論する場合その切り口は多々あり得る。
今般の農業基本法の改正の趣旨も、基本的には「農業の復活」を期するものであり、従って、以下の提言とその方向性は同一と考える。
しかしながら、敢えて、我々の立場として明確にしておかなければならないことが二つある。
一つは、行政の役割についてであるが、今後、農業の復活を真に図るに際しては、農業従事者に対する公的な保護・支援は必要最小限に止めることが肝要という考え方である。
もう一つは、農業復活を唱える理由についてである。農業という産業が近代工業化の過程で相対的な地位を低下させてきたことを嘆くのは無意味である。しかしながら、自然環境を維持するシステムでもある農業が絶対的に衰退していくことを見過ごすことはできない。ここに、我々、山梨経済同友会が「農業復活のために」の提言を行う理由がある。
そもそも、農業が衰退してきた社会制度上の背景には、農家の事実上の世襲制があったと思われる。また、戦後の農地解放の精神を反映した旧農業基本法が、農地の売買・賃貸借を硬直的に制限してきたことも、その世襲制を補強してきたと考えられる。
その結果、生産手段である農地の利用と農業技術の伝授は、一部の例外を除いて、農家に生まれた者のみに限定されてきた。
そして、農家に生まれた者全てが、起業家精神や経営手腕に富んでいるということでは必ずしもなかった。
企業の盛衰は人に因る。農業を復活させるためには、起業家精神が旺盛で経営能力の高い者の参入が不可欠である。
以下の提言は、そうした起業家精神が旺盛で経営能力の高い者が農業に参入する際に直面する障壁を低くするための施策である。
提言する施策は、いずれも、既に存在している制度を拡充することにより実現が可能なものであると考える。
山梨県農業振興公社、山梨県農業大学校、山梨県信用農業協同組合連合会等関係者が、そうした施策を早急に実行に移されることを切に期待したい。

(農業経営の参入に際しての障壁)
人々が農業を職業としようとする際に障壁となることが三つある。

(1)人々が職を求める時、「農業会社」という就職先は非常に数が限られている。また、農業の仕事場である農地に関する情報(農地の売却物件、賃貸物件)が入手し難い。

(2)人々が高校・大学を卒業し仕事に就く際、それが会社組織であれば、通常、社内研修で仕事の仕方を覚える機会があり、また、修業の時代も給与を受け取ることが一般的となっている。しかし、上述のように「農業会社」就職の機会は極めて限られており、また、農家に生まれなかった者にとっては、卒業後、生活を維持しながら農業技術を修得できる場所が少ない。

(3)農業を起業する際の資金については、農業収入が収穫期までの年月、天候等の不確定要因に左右されるため、所謂ベンチャー・キャピタルでの対応が望ましいが、その資金提供者は少ない。

提言
(参入障壁の解消策)
1. 市町村農業委員会は、現在既に行っている遊休農地、賃貸可能農地に関する情報を市町村内に止めず、それらを入手したと同時に、財団法人山梨県農業振興公社に提供する。
公社は、それを基にインターネット等で検索可能なデータベース(場所、面積、地形、適正栽培農産物、地代、賃借契約期間等)を構築し、県内外の農業就業希望者や事業拡大希望者が簡便に検索できるようにする。

2. 農業就業希望者の農地手当てを円滑に行うためにも、また、農業就業希望者が共同で農業法人を設立させる機会を広げるためにも、農業就業希望者の照会窓口を公社に一元化させる(現在は、各地農業委員会、社団法人農業後継者育成基金協会等に分散)。

3. 地主と賃借人との間の契約を円滑に進めるために、当事者が希望する限りにおいて、公社は賃貸借契約の斡旋仲介を行う。但し、公社の健全経営のために、公社は自己勘定での売買・賃借は原則行わない。

4. 真に農業を志す者に対する技術伝授の場を拡充するために、県立農業大学校の研修部(大学卒業後の1年コース)の定員を大幅に増やす(現在10名)。それに必要な教員の補充については、県内の3農業高校を総合コースに転換し、その上で、農業コースを実態に合わせて運営することにより、農学専門教員を確保する。
なお、これを機会に研修部の授業料は受益者負担の原則から有料に改める。

5. 山梨県信用農業協同組合連合会(県信連)は、農業法人が発行する株式の保有や新規農業従事者に対する起業資金貸付(ベンチャー・キャピタル)が順便に行えるよう、その原資調達手段として投資信託の設定・販売を積極的に推進する。

以 上

平成11年8月

(この提言は、産業政策委員会風間善樹委員長(東京エレクトロン特別顧問)、高野総一副委員長(吉字屋社長)が、8月4日天野建山梨県知事および小林二郎JA山梨信連会長に手交したものです。)

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